連載「絶対英文法」の4回目は、英語の上級者でも間違えることがある冠詞。聞き手に誤解を与えないための基本をニュアンスとともに押さえましょう。
英語の「名詞」は、単数か複数かを冠詞を使って表現する
英語の名詞は数量(単数か複数か)を厳密に示す必要があるだけでなく、話し手と聞き手の双方にとって、それが「特定」なのか「不特定」なのかを、冠詞などを用いて表現しなければなりません。
次の例文を比較してください。英文(A)→(E)の順に、名詞の限定性が強くなるイメージになっています。
(A) Picture books are not just for kids.
絵本は子どもたちだけのものではない。
(B) Some owners are super rude to their customers.
経営者の中には、顧客に対して超失礼なやつもいるんだ。
(C) I bought a new hair straightener.
新しいストレートヘア・アイロンを買ったの。
(D) I tried to get in, but the door was locked.
入ろうとしたんだけど、ドアが閉まってたんだよ。
(E) What did you do with that money?
あのお金はどうしたの?
英語の「冠詞」は、聞き手にとって「初耳」の情報かどうかで決まる
最優先は、aとtheを使い分ける際の意識です。英文 (C) のaは、相手にとって「初耳」の情報、あるいは「特定できない」情報を示すため「不定」冠詞(不定=1つにビシッと定まらない)と呼び、一方、英文 (D) のtheは大げさに言えば「あの」「例の」といった感じで、聞き手にとっても「ああ、あれね」と情報が共有できている名詞に対して用いるため、「定」冠詞(定=1つにビシッと定まる)と呼びます。
英文(A) ~(E) のポイントをあらためて整理しました。後ろに続く名詞のカタチも大切です。
不特定
(A) Picture books are not just for kids.
無冠詞(冠詞なし)+複数名詞(可算名詞)/不可算名詞
一般論を述べる場合など、「・・・というものは」と漠然とした名詞全般を指す。
(B) Some owners are super rude to their customers.
some+複数名詞(可算名詞)/不可算名詞
漠然と「(多くはない)いくらかの」数量を指す。
(C) I bought a new hair straightener.
a/an+単数名詞(可算名詞)
数多くある中の「ある一人・一つ」を指す。
特定
(D) I tried to get in, but the door was locked.
the+単数名詞・複数名詞(可算名詞)/不可算名詞
話し手と聞き手が共有できている情報。
(E) What did you do with that money?
this/thatなどの指示代名詞、your/Ken’sなどの所有格の代名詞+単数名詞・複数名詞(可算名詞)/不可算名詞
話し手と聞き手が共有できている情報。theよりも明確に、具体的なものを指し、限定している感じが強くなる。
※the、指示代名詞、所有格の代名詞を「限定詞」とも呼びます。
冠詞の使い分けに迷ったときに判断する方法
不定冠詞a/anは、慣れないうちはどこにでも置けそうな気がするかもしれませんが、可算名詞の単数形の前にしか置けない、ということを押さえておきましょう。
さて、使い分けのコツですが、限定の度合いが強いthatを中心にします。名詞の前のthatを置いてみて、聞き手にとって唐突に聞こえるかな?という文脈であれば、上の表の不特定グループに属すと判断します。「聞き手の立場で考える」ことが大切なんですね。
次回は、気持ちを発信する助動詞ついて紹介します。どうぞ、お楽しみに。
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